部屋に入ってからソファーでくつろいでいる嵐に、優翔は焦れったく感じていた。
優翔自身はすぐにでも月深がいる部屋へ飛び込んでいきたかったのに
「待て、向こうだって警戒しているから容易には近づけまい」
と嵐から忠告されてとりあえず部屋にいた。
「明け方かな」
嵐が煙草に火をつける。
そんな時間まで暢気に待っていたら月深がどんなひどい目にあうかわからない。
優翔は嵐の正面に仁王立ちになった。
「ど、どうした?」
あまりに恐い顔をした優翔に嵐は少しだけ慌てる。
「まぁ、優翔座れ」
そこに風呂場から戻ってきた和真が入ってきた。
「あいつだって一端のやくざじゃねぇか、多少覚悟くらいは決めてるだろう。なぁに、お前が助けなくてもいざとなりゃあ己の身くらいは守る術くらい知らなくてどうする?」
そう言われても優翔には納得できない。
月深に他の誰かが触れることが許せない。
月深だって好きで捕まった訳じゃないけど、弱みを握られてるから抵抗できなかった事も推測できた。
俺が行ってやらないでどうする?
月深が可愛そうだ・・・
「もういい!居場所さえわかればあとは俺ひとりで何とかする」
優翔がきびすを返すとその腕を和真が掴んだ。
「だから待てって言ってんだよ!」
いつになく厳しい表情の和真は真剣に優翔を止めた。
「お前が考えているほど生やさしい相手じゃねぇ!ヘタに手で出してみろ!月深が守ろうとしてるあいつの兄貴の命の保証ができねぇじゃねぇか!!その段取りが着くまで待てっていってることがお前にはわからねぇのか?!このばか!!」
優翔はハッとした。
月深が体を張っても助けたそうとしている兄のことを優翔の浅はかな行動で台無しにしてしまうところだった。
「悪かった・・・」
優翔はうなだれた。
でも心の中は決して穏やかではない。
今、この瞬間に月深はどんなひどい目にあっているのかと目を細めた。
<「更待月」月の砂12へ続く>
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