優翔が軽井沢の別荘に着いたのはそれから約1時後だった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
別荘の窓からは明かりが漏れていた。
優翔は車を止めると慌てて玄関のインターホンを鳴らす。
だが、返事がない。
月深が拗ねてでもいるのだろうか?
優翔は玄関のドアに手をかけた。
開いてる?
不振に思いながら玄関を覗くと玄関の月深の靴がバラバラになっていた。
咄嗟に優翔はただ事じゃないと感じた。
慌てて部屋の中へと入っていったが、既にその部屋の中には人の気配すら残っていなかった。
「一体何があったんだ・・・」
一足遅かったのだろうか?
優翔は月深の携帯が落ちているのを見つけて拾い上げた。
優翔が送ったメールが開かれた形跡がある。
もしかして優翔が着たと思ってドアを開けたところを拉致された?!
安易に想像が出来るほど単純な手口に月深は引っかかってしまったらしい。
優翔はメールを調べて月深を誘拐しそうな相手を調べる。
だが、それらしいやりとりが見つからなかった。
「どうしよう」
優翔は部屋の中を見回した。
だが、しばらく月深と会っていなかったので月深が誰とどんなことをしていたのか知らない。
もともと連絡を取り合っていたとしても優翔は月深の仕事相手のことまでは知らない。
月深も優翔に自分たちがいる世界を見せようとはしなかった。
唯一手がかりがあるとすれば、優翔が勤めている店のオーナーである猿島組の嵐くらいだ。
優翔は一度引き返すことにした。
とりあえず嵐に会わなければいけないと思った。
すぐに別荘を出てもう一度車に乗った。
エンジンをかけると東京から来たせいでガソリンの残りが少ないことに気がついた。
優翔は待ちの中のガソリンスタンドに寄った。
「いらっしゃいませ」
スタンドの店員が声をかけてきた。
「ハイオク満タンで」
「はいっ」
きびきびとした動きでガソリンを入れながら窓ガラスを拭く。
こんな季節はずれのリゾート地では客も多くない。
「1時間ぐらい前になりますか妙な車が来ましてね」
人なつっこい店員は優翔に話しかけてきた。
「妙な車?」
「はい、真っ黒いワゴン車に黒ずくめの格好の男が数人乗ってて、それだけなんですがちょっと強盗でもしたかこれからするんじゃないかって感じでしたね」
「何の車だった?」
すると店員は嬉しそうに
「あんまり妙なんでナンバー覚えていますよ」
優翔はもしやその車に月深が乗っていたんじゃないかと考えた。
<「更待月」月の砂3へ続く>
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