来た!!
思ったよりも随分と到着が早い気がする。
普通に都内にいたとしたら新幹線でも1時間くらいはかかるはずだけど、30分足らずで到着するとは信じられない。
「太陽兄貴だ」
と出ようとする月深を止めた。
「違うんじゃないか?早すぎる」
しかし月深は笑いながらドアを開けてしまった。
「月深逢いたかったぞ」
とごつい面構えに頬に傷のある、いかにもその筋に違いないという男が月深を抱きしめている。
こいつが兄貴?!
あまりにも月深と違いすぎた。
「兄貴・・苦しい」
「兄貴なんて水くさいぞ、昔みたいにたーくんって呼んでくれ」
その言葉に優翔は思わず噴き出してしまった。
ジロリと太陽の視線が優翔を捕らえる。
「月深、誰だこの鼠は」
上から下までジロジロと見られて優翔は深々とおじぎをした。
「待田優翔といいます。この度は」
「兄貴、俺の友達だよ」
礼を言おうとした言葉を月深が遮った。
月深は太陽を抱き込んで背中をポンポンと叩きながら優翔に目配せをした。
抱き込まれた太陽はまるで最愛の恋人にでも出会ったようにデレデレと閉まりにない顔になる。
その光景が滑稽すぎて優翔は懸命に笑いをこらえた。
「友達?そうかともだちだな」
やけにともだちと言う部分強調したのに優翔はチラッとベッドルームを見て冷や汗を浮かべる。
「はい、大学で一緒でした」
「ほう、見かけによらず優秀なんだな」
と太陽に言われて、優翔は月深のプライベートな事はあまり知らなかったことに気づいた。
そういえばこいつどこの学校へ行ってたんだ?大学行っててよかったなぁ
と胸を撫で下ろした。
「そうそう同じF大の先輩と後輩なんだ」
月深の花がほころぶような笑顔を見て、太陽の強面が破顔していく。
相当なブラコン野郎だな。
でもだから月深は親父よりもこの兄に相談しようと言ったのだろう。
せっかく月深が助けてくれたのでその話題はそれ以上深くなる前に誤魔化した。
「それにしても随分と早く到着されましたね」
「ああ、ヘリが空いていてラッキーだったな」
という太陽を優翔はキョトンと見ていた。
どっから突っ込むべきだろう・・・
ヤクザがヘリを持っていたこと?月深に会いに来るためにわざわざ高い燃料費をかけてヘリを飛ばしてきたこと?空いてたって、普段からヘリを使って一体何してんの?この人・・・
ドクターヘリでもあるまいし。もっと人のために使えよ
と心の中で優翔は叫んだ。
<「更待月」月の石12へ続く>
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