別れると思ってた。翼も彼女のことはよく思っていなかったからね」
雫は何も言わずに下を向いて食事をしている。
朱鳥はテーブルの横に立って黙っていた。
「正直言うとさ、俺あの占い結果のおかげで覚悟が出来たんだよね」
正面に座っていた雫の顔をじっと見つめた。
「はじめて占いも悪くないと思ったんだけどさぁ、その後の出会いが壮絶すぎて・・・その・・・」
次第に頬を染めていく羽根に雫が微笑んだ。
「な、良かっただろ」
朱鳥はまだ黙って羽根を見ていたがその瞳の色が気のせいか柔らかく感じた。
「だから今夜こそ羽根盛りで」
「それは却下」
羽根と朱鳥が同時に返事を返したので雫はため息をつきながら背もたれによりかかった。
「まあ、必ずやってやるから楽しみにしていろ」
やると言ったらやる男だと羽根は知っていた。
あんまりベタベタするものじゃなければ許しても良いかなどと考える自分は脳を侵されているに違いない。
思わずクスクスと笑い出すと雫は羽根の口にパンを押し込んだ。
「食え!」
「んぐっ!」
突然口に入れられたパンは焼きたてで柔らかく口の中にバターの香りが広がった。
うまい・・・・
強引に食べさせられた割に美味しい。
羽根はニッコリ微笑んだ。
「やっぱ俺、朱鳥にすれば良かっ・・・んぐ」
言い終わらないうちに今度は皿の上に乗っていた太いフランクルトを咥えさせられた。
「お前それ似合うな」
楽しそうに微笑む雫に瞳だけで講義する。
フランクフルト咥えている姿が似合うとかマジうぜぇ・・と睨みつける。
「ほらほらそれそれその顔・・・朱鳥写真撮っておけ」
と言いながらも朱鳥が撮らないのを知っていたのか自分の携帯のシャッター音を鳴らす。
羽根はモグモグと懸命に太いフランクフルトを食べた。
「ほら羽根これ待ち受けにする」
と悪趣味きわまりない。
何かを言おうとすると雫は羽根の口に何かを放り込む。
おかげでテーブルの上の食事が片付いていった。
せっかくのうまい料理が殆ど雫に口に投げ込まれる形で終わる。
「コーヒーはいかがですか?」
朱鳥がポットを持って現れると
「ミルクは俺がたっぷり直に口に注いでやるから」
と・・・
もう朱鳥と顔を見合わせて言葉も失った。
お前だけだよ・・・あのカッコイイ雫はどこへ行った?
それとも猫かぶってたのか?
羽根はため息をつきながらいつもよりも倍以上疲れた食事を終えた。
これならベッドの上で啼かされている方がマシかもしれない。
何よりも雫のオヤジ発言を聞かなくて済む。
ふとそこに羽根のは携帯電話の着信音が鳴った。
<「恋占い」恋占い3(最終章)へ続く>
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