羽根は眠ってしまっていた。
朱鳥にそう言われてゆっくりと体を起こしていく。
「ん?どこ」
木に囲まれて薄暗い場所にポツンと一見の洋館が建っていた。
一軒家にしては少し大きいが雫の家ほどの豪邸でもない。レストランくらいの大きさの建物だった。
「占いの館ですよ」
朱鳥は羽根の乗っていたドアを開いて羽根を抱き上げた。
「ありがとう、歩くのちょっときついと思ってたから助かるよ」
「いいえ」
朱鳥は眉ひとつ動かさずにそう言いながら羽根を横抱きにして車のドアを閉めると砂利の上をザクザクと歩きながら大きな洋館のドアの前に立った。
ドンドンとドアに備え付けられていた金具を叩いて合図した。
程なくドアが中から開かれる。
羽根は注意深く中の様子を伺った。
「どうかなさいましたか?車いすでもお持ちいたしますか?」
「いやこのままで大丈夫だ」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
きちんと黒いスーツを着こなしたまるで執事のような男性が丁寧に挨拶をしてからそう言った。朱鳥も臆することもなく指示されるまま奥へと羽根を抱いたまま進んでいく。
「こちらでお待ちください」
「どうも」
大きなドアを両開きに開いて客間の様なところへ通された。
広々とした8角形の作りになっていて半分は窓になっている。窓の向こうはテラスがあり中庭が見えた。
その中央にソファセットが置かれて朱鳥はその上に羽根を座らせて自分もその横に座った。
正面のソファーの向こう側に小さなドアが見える。どこかの部屋に繋がっているらしい。
「ここに何しに来たの?」
羽根は部屋を見回しながら横にいる朱鳥に尋ねた。
朱鳥は口元を上げた。
「あなたがお好きな占い師をご紹介しろと雫様のご指示です」
「俺、占いなんか嫌いだけどどうして?」
「まあ、私も占いなど信じてはおりませんが・・・」
と朱鳥は奥のドアをチラッと見た。
するとそのドアが開く。
「あっ・・」
羽根は座り直しながらドアの方を見つめた。
「えっ?何の冗談?」
と向こうからこちらに向かってくる人物に話しかけた。
「別に、君がいつも読んでいる占いは俺が書いてたって知らないだろ」
「嘘・・・」
「ほんと」
「雫が占い師なの?」
呆然と正面のソファーに座る雫を見つめる羽根に雫はニコニコと笑いかけた。
「正確にはちょっとだけ違うな。俺は占い師は信じてないし占い師じゃない」
羽根はまるで理解できないという表情で雫を見つめる。
「じゃあ、何?だって占い載せてたんでしょ?現に当たってたし・・・」
「当たった?当然の結果でしょ。そうなるように努力したのは俺だからね」
「えっ・・・」
羽根は正面でニコニコ笑う雫を見つめながら、雫と出会ったときのことから考えた。
朝の占いで彼女と別れることを当てられてから雫と出会うまでの時間はそんなにかからなかった。あれは全て仕組まれていたこと?
嘘だ・・・人の心までは操れるはずなんかないし・・・
俺が色々と酷い目にあってきたことだって雫が仕組んだ?
どうしてそんな酷いこと・・・
<「恋占い」占いの館にて4へ続く>
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