「離せ」
翼が羽根から雫の手を引き離そうとすると羽根が翼から離れた。
「兄さん、ちょっとごめん」
その言葉に木田が翼の腕を引っ張った。
「少し仕事の話があるんだけど、ちょっとお兄さんを借りてもいいかい?」
「ええ、もちろんです」
羽根にそう言う木田に頷くと翼を連れて離れていった。
「で、君はどうして会社を休んでこんなところに来ているのかな」
雫は羽根の瞳を覗き込んだ。
「少し怠くて体調が優れませんでしたので」
すると雫は羽根に少しずつ近づいて来る。一方羽根は雫から距離を取ろうと少しずつ後ずさり、やがて壁に突きあたった。
「ふうん、体調が優れないねぇ」
下から舐めるように羽根の体を見つめて顔で止まる。
「本当です」
羽根がそう言うとスッと雫の手が羽根の腰に回されてスーッと撫でた。
「はっ・・」
羽根が僅かに声を上げると雫は羽根の耳元で囁いた。
「それは誰のせいだ?君の兄さん?それとも別の誰かか?」
「いえ・・そんなんじゃ・・あっ」
雫の言葉を否定する羽根に雫は羽根の体を一層強く壁に押しつけて足の間に自らの膝を入れる。そのまま膝で羽根の足の間に触れた。
「ほらすぐにそんな声を上げる。羽根は素直だからすぐにわかるよ。なんなら裸にして確かめようか?」
耳元で囁かれて羽根は雫から顔を背けた。
崩れそうになった羽根の細い体を両腕で抱えながら雫はスラックスのポケットからカードキーを取り出した。
「具合が悪そうだね。少し俺の部屋で休ませてあげようね」
引きずられるようにして廊下を歩いても誰も彼らに気をとめる者もいなかった。
それどころか雫に皆が挨拶をしていくのを見て羽根は不思議に思っていた。
だが、羽根が連れて行かれた雫の部屋を見て雫の格の違いを見せつけられた気がした。
羽根にとっては縁のない高級なホテルなのにこの男の部屋はその中でも一層高いデラックスルーム。スイートまではいかなくてもそれなりの高級感が漂っている。
「あのう・・もう兄の元に戻してもらえませんか?」
「だめ。1日君の顔を見なかっただけで俺は羽根不足」
部屋に入ると同時に抱きかかえられてベッドへと倒れ込む。
予想はしていたがここまで露骨に振る舞われると羽根も抵抗のしようがなかった。
<「恋占い」シティホテルにて3へ続く>
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