磨き上げられたエントランスには塵一つ落ちてはおらず、ドアのガラスもピカピカに磨きあげられている。絨毯は靴が沈んでしまうほど毛足が長く、入口のベルボーイは深々とお辞儀をしていた。
羽根はあまりこういった場所には来たことがなくて緊張していた。
「やあ、翼久しぶり」
「こんにちはお元気そうっすね」
一歩先を歩いていた翼に高級そうなスーツを着た青年が声をかけてきた。
翼も親しそうに挨拶をする。羽根は少し遅れて歩いていると急にその青年が振り向いた。
「木田肇と申します。翼君には色々と大変お世話になっています。君が弟君か翼君から噂は聞いているよ。なるほど翼君が自慢するのがわかるなぁ、そこらの女の子よりもよっぽど美人じゃないか」
木田という青年はいきなり羽根の手を取って顔を覗き込んできた。
「おいおい気安く触るなよ」
翼が慌てて羽根の手を取って木田から引き離した。
羽根は苦笑いする。
「美人って・・・」
一体この兄は自分のことを外でどんな風に言っているのか顔を見つめた。
「羽根、彼は腐れ縁で長いこと一緒に仕事をしてるんだが、気をつけろよ。こいつのプライベートはよくわからないことが多すぎるから」
「おいおいそれはないだろ」
翼の肩に木田が手をかけた。その瞬間2人の視線が何かを語っているように見えたのは気のせいだろうか?
すぐに翼は羽根笑いかけた。
「さぁ、こんなところでウロウロしてないで中に入るぞ」
と羽根の肩を抱いて歩き出すと反対側の肩を木田が抱いた。
「お前は触るな」
「えっ、いいじゃねぇか。このけち、なっ!」
と木田は羽根に同意を求めて羽根もついつられて頷くと、翼は
「仕方ねぇなちょっとだけだぞ」
と3人で肩を組んで歩いていく。
その様子があまりにもおかしくて羽根はクスクスと笑い出すと、翼と木田も笑い出した。
「おや、肇?羽根?」
見覚えのある顔が近づいてきた。
「・・・」
その男が近づいてくると翼は不機嫌そうな顔をした。一方木田は片手を上げて挨拶をした。
「何だ雫じゃないか?お前も呼ばれてたんだ」
「まぁ、某会社の営業が今日は休んでいて連絡ができなかったんだが・・・」と羽根を見た。羽根はバツが悪そうに視線を泳がせると、それに気づいた翼か強引に羽根だけを連れてその場から離れようとした。
「待って羽根」
雫の手は羽根の腕を掴んでいた。
<「恋占い」シティホテルにて2へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れ様でした。
web拍手をありがとうございます。
PR