羽根は翼を睨みつけながら片足で兄を蹴飛ばした。
「いてっ!」
その蹴った足が兄の股間を直撃して羽根の体は兄から離れた。
「もう、いい加減にしないと本当に追い出すからね」
羽根は真っ赤になって兄を怒鳴った。
だが、翼にとってはそんな弟も可愛くて仕方がなかった。
「わかったよ、わかったからそんなに怒るな。兄ちゃんはお前が心配でまた変な男がいたから余計心配になっただけなんだからな」
翼の言い訳に羽根は上目づかいに兄を睨みつけただけだった。
だが、翼はそんな羽根が余計に可愛い。
翼は両手を広げて羽根を抱きしめた。
「そんな顔するな。本当に心配しているんだぞ。お前は俺のたったひとりの弟なんだから」
弟にしては異常なほどにギュウギュウと抱きしめられて羽根は少し呆れた顔をした。
まあ、兄の弟好きは今に始まったわけではないし、別に他人じゃないから羽根もある程度なら悪い気はしなかった。
「ところで兄さん、今度はどのくらいいられるの?」
兄がここにいてくれれば雫も山田でも羽根にしつこくつきまとうことはできないだろう。
羽根はそう思うとこんな兄でも頼りになった。
「そうだな、今度はこっちで立ち上げから立ち会うことになったから1年ぐらいはいられそうだな」
羽根の兄は建設関係の仕事をしている。一見フリーのカメラマンのような格好をしているが、フリーの設計士だった。
フリーという点では同じだが、一度プロジェクトに参加すると最初から最後まで関わることが多い。そのため日本全国、時には海外にまで飛び歩いていた。
これでもそれなりに業界では売れっ子らしい。羽根にはそんな業界のことは全くわからなかったが、兄が飛び歩いているところを見てそう感じていた。
その兄が戻ってきてくれて1年も一緒にいてくれるのはとても心強い。
少なくとも羽根は翌朝の占い結果を見るまではそう思っていた。
邪魔者のせいで彼女ができません。
せっかくあなたに好意をもっている異性が現れても、その邪魔者はことごとくあなたの邪魔をします。そのおかげでなぜか同性に好かれたり、落とし穴に落ちることも・・・
今日のあなたは要注意です!!
だから占いなど信じてはいないはずだった。
それなのに現在の自分の状況を言い当てられたような気がした。
それにしてもなにやら体が重い・・・携帯画面を見ていた視線を自分の体に移動させてその原因にため息をついた。
翼が羽根を抱きしめながら気持ちよさそうに眠っている。
こんなことが1年も続くのかと思うと少しだけ憂鬱になった。
<「恋占い」羽根の部屋にて4へ続く>
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