先輩の山田と調べ物をするために今日は1日地下にある暗い書庫で過ごさなければならなかった。
「悪いな美津濃、こんなこと手伝わせちまって」
「あ、いえ全然気にしないでください」
取引していた企業の担当が変わって、クライアント側もこれまでの取引内容の詳細が知りたいと言われた。ここ数年のものならパソコンで調べられたが、10年以上前のものになると流石に書類でしか残っていなかった。
それをパソコンに取り込む作業をするために書庫にパソコンを持ち込んでの作業になった。
担当は山田なのだが、羽根も一緒に行動するため知って置いた方が自分のためにも役立つと思って羽根は山田に手伝いを申し出た。
「これってそうですよね」羽根が山田に書類を手渡すと無造作にそれを受け取った山田の手が羽根の手に触れた。
「あ、すまん」「いえ、別に」
そう言って間近で見下ろされてなぜか羽根はドキリとした。山田の瞳が怪しく潤んでいる。
羽根がそれに気づいて一歩下がろうとしたその背中に山田の腕が回された。
「お前って男なのに、なんて言うか・・・ちょっと色っぽいよな」
間近に顔を寄せられて言われると羽根は視線を逸らした。
その仕草が余計に山田に油を注いでしまったらしい。
「・・っ・・」次の瞬間羽根の唇を山田が塞いでいた。
片手で羽根の背中を抱きしめながらその手はいやらしく羽根の腰から下を撫で回している。
羽根が逃げだそうと片手を伸ばすとその手ももう片方の山田の手に握りしめられた。
山田は決して大きな体でもなく、普通の体躯だが学生時代野球をやっていたと聞いたことがある。なるほど腕の力はなかなか強かった。
「先輩・・こんなところでやめてください!」
ようやく唇を解放された羽根は山田に仕事を思い出してもらおうと、そう言ってみたが山田は
「こんなところだからいいんだよ」と羽根を資料台の上に押し倒した。
赤い顔で見下ろされて羽根は逃げられないと思った。
山田のことは嫌いではないし、尊敬もしている。けどこんなことは望んではいない。
どうして自分はこんなにも男ばかりを惹きつけてしまうのかと羽根は自分自身を悲しく思った。
「いやです・・・やめてください」
「それそれ、羽根には悪いんだけどその顔一回泣かしてやりたくて、ずっと好機を待ってたんだ。今日やっと念願が叶うんだ」
そういう山田にはもう何を言っても無駄なのかもしれない。
羽根の着ていたYシャツのボタンを一つずつゆっくり外しながらその首から鎖骨に唇を寄せて口づけてくる。
「あっ・・」
乳首を吸われて高い声を上げた羽根に山田は子供にするように頭を撫でた。
「いい子だからもっと良い声で啼いていいよ。ここなら誰にも羽根の良い声聞かれないからね」
その時羽根は最初からそのつもりで山田がこの書庫に自分を誘い出したんだと、ようやく理解した。
「先輩・・ひどい・・・」
その言葉に山田はニヤリと笑った。
<「恋占い」書庫にて1>
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