一つ手前なら都内の場合10分もかからず歩ける距離だ。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
羽根はそのまま降りて会社まで歩いていくことにした。
途中退屈なので付き合っている彼女にメールを送る。
おはよう
実はさぁ、俺朝の電車で痴漢に会ってさぁ、それがかなりのいい男で俳優みたいだった。
今一駅前で降りて会社まで歩いてる途中
と送ると、程なく返信が帰ってきた。
マジ?!それってすごいね。
どうして男のあなたがそんな目に会うの?それって勘違いなんじゃないの?
いい男、私も見てみたかったわ。ああそれからごめん
今日の夜約束ダメになった。本当にごめん・・(>_<)
彼女との約束がダメになるのにはなぜか慣れ始めていた。
こんなことに慣れるのも可笑しいと思いつつ返信した。
お前最近多すぎ!!!埋め合わせもたまってるぞ!!
何だかまるで自分を避けているように、約束当日にキャンセルが相次いだ。
“まるで”ではないのかもしれない・・・
『恋を取り巻く状況自体、絶望的なものになるかも』
ふと今朝見た占いの言葉が頭に浮かぶ。
占いなど信用していないのにバカだな
彼女からの着信音が鳴ったのは会社のあるビルの前だった。
ごめん・・・もう会えない
突然切り出された別れのメール。
こんな朝から唐突に訳もわからず突きつけられて羽根は呆然と入口の前で立ちつくした。
「どうぞ」
道路脇でティッシュを配っている人が近づいて羽根の手に無理矢理ティッシュを持たせて去って行った。
羽根はハッとしてビルの入口に入りながらもらったティッシュをポケットに入れた。
とりあえずそれでも仕事に行かなければいけないのがサラリーマンの辛さだ。
羽根は昼休みにもう一度彼女にメールを送ってみた。
未練がましいとは思ったけど一方的すぎて納得できない。
もうダメになっているのならせめて相手の非を認めてもらうくらいはありだと思う。
他に好きな奴でもいるのか?
どうして今まで俺と付き合っていた?
俺にはわからない(^^;)
短いけど思いを精一杯ぶつけた文字。しかし彼女からの返信は来なかった。
一体どう思っているのかさえわからないまま終わるなんて・・・
だが、羽根もある程度の諦めがあった。ずっとつきあっていても、どこか本気で彼女のことを考えられなかったのも事実だった。
最初も彼女から羽根に近づいてきて、間もなくつきあい始めた。積極的に会う約束をしたのも彼女の方だったけれど、それがなくなるのは寂しいなんて都合が良すぎるかもしれない。羽根が携帯メールの返信が来なかったことでもう潔く諦めようと思った。
だが仕事が終わって帰りにふと携帯を取り出してからハッとする。
そうだもうメール送れないのか・・・連絡をする相手がいなかったことに孤独感を覚えた。
ひとり好きなアイスクリームショップに行ってアイスを食べて気を紛らわせる。
手に付いたアイスを拭おうとポケットからハンカチ取り出しながら、朝もらったティッシュに気づいてその広告が目に飛び込んできた。
“あなたのお話伺います。占いの館”
よりによって占いの広告だったとは・・・自嘲しながら羽根はアイスを頬張った。
<「恋占い」序章3へ続く>
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