でもそれを上回るような素晴らしい出会いがあるでしょう。今日であった人はあなたの力になるでしょう。
翌朝の占い結果・・・
どこか自分の心の中を見透かされているように思えるのは、羽根が落ち込んでいるからかもしれない。
そんなの信じているなんて全くどうかしていると思いながら今日も通勤電車に揺られていた。あたりまえのことだが、今日は痴漢に遭うこともなく無事に会社のある駅に到着した。
会社に行くとザワザワと社内が何やら騒がしい。
「そうか4月1日か・・・」4月が新年度のため人事異動がある。羽根の部でもで部長がが替わっていた。替わるのは知っていたけれど羽根はまだ入社2年目の下っ端なので直接にはあまり関係ないと思っていた。だが、オフィスの雰囲気がどこか違っていた。
「おはよう美津濃、今度の部長は女なんだってよ。それもニューヨークからの帰国子女らしいぜ」一緒に仕事をしている先輩から新しい上司の噂を聞いた。
羽根はそれで雰囲気が変わっていたことに納得した。
なぜなら女子社員が生き生きとしている。女性が部長になれるという見本が目の前にあるだけでこうも生き生きとするものなのかと、羽根は思った。
「おはようございます美津濃君、今度の部長は色々と面倒見がいいらしいですよ。早速相談した子がいて、その子の相談を聞いてくれたらしいよ」
ああ、それで・・・羽根は納得した。何事も頼りになる人間は重要だし、今の世の中には貴重だ。それが女となれば女子には強い味方ができたも同然だ。
羽根はひとり頷いた。
午後には羽根は仕事で外出していた。いつもは先輩社員と一緒だったが、今日はトラブルのおかげで先輩は別のお客に行くことになり、無難な納品は自分ひとりで行くはめになった。
そろそろ独り立ちする次期でもあり、羽根は張り切って得意先へと出向いたのだった。
ところが納品先の担当が約束の時間から20分過ぎても姿も見せなければ連絡すらよこさない。羽根はもう一度受付の人に連絡を取ってもらおうと、立ち上がった。
ドンッ!!「あっ!!」「ごめん!!」
勢いよく走ってきた人物がいて羽根はタイミング良くその人とぶつかって転がってしまった。彼は慌てて羽根を起こすと謝った。
「すまない、今ちょっと急いでるから、これ」と無理矢理名刺を手渡されて彼はスタスタと出て行ってしまった。
羽根が押しつけられた名刺を見てびっくりした。
桧山雫・・・取締役?って偉い人なの?どう見ても20代が30代にしか見えないし、そんなに偉そうには見えなかった。ちょっと痛いけどこのくらいどうってことはない。
そこにようやくお客が姿をみたせ。
「悪かったね美津濃君」
羽根はそのまま仕事の話に入った。
「それはお前、なめられたんだよ」
オフィスに帰ってきて、先輩の山田一郎に待たされたことを報告すると、そう言って笑われた。
「お前は見た目が優しそうだからそんな風に見られるだろ。だから俺もお前が心配なんだよな」
山田は片目を瞑った。ウインクとは思いたくはない・・・羽根にはそっちの趣味はない。
「ああ、そうだ部長が呼んでたぞ。赴任早々何の用だろう・・あんな美人に呼ばれるなんてお前ついてるぜ」
「部長が?」赴任の挨拶は聞いていたが、直接会話もしたこともないのにどうして呼ばれるのかと羽根は首を傾げながら部長室へ向かう。
部屋の前でノックをすると「どうぞ」という返事が返ってきた。
羽根はドアを開けて中へ入った。
<「恋占い」序章4へ続く>
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