衝動的になる部分と、気持ちを抑えようとする部分があって、心が引き裂かれてしまいそう。恋を取り巻く状況自体、絶望的なものになるかも。
今日の結果は最悪だと思った。
だけど占いなんか信じないし良いときだって当たったことなんかなかった。
通勤途中電車の中で携帯電話から見る情報ページの中に掲載されている占いのページ。
どうでも良いと思いながらも結局毎日見るのが美津濃羽根(みずのはね)の日課になっていた。
会社への通勤時間は約1時間。ちょっと長いけど通勤時間が短いと仕事とプライベートの切替が難しいからそのくらいがちょうど良いし、家賃もその方が安い。
実家は遠くはないが近くもないという中途半端な関東圏内なのだが、通勤には流石に時間がかかるのでひとり暮らしを始めて1年になる。
恋人はいるが彼女には別の男の影がちらほら・・・あえて確かめる勇気もないまま現在に至る。まあ、今日の占い結果が気になるのはそんな理由もふまえてのことだった。
携帯電話を胸のポケットにしまって目を閉じると座っているせいか眠気が襲ってきた。
電車の揺れとポカポカと温かい日差しにうとうとと眠ってしまった。
しばらくして違和感を感じて目を覚ました羽根は電車が相当混雑していることを知った。
座っている足の間に男が立っている。彼の足が羽根の真ん中の部分にたまに触れる。
何だがその感じが故意にも思えるがこの混雑状況からはよくわからなかった。羽根は足を閉じようとして足を持ち上げると、今度は隣に座っている女性から睨まれてしまった。
あ、こっちが痴漢と間違われたらばからしいや。それにもうすぐ降りる駅だから我慢しよう。と思っていたが車内はどんどん混んできて彼は羽根の足の間に完全に入り込んでいる。
股間には彼の膝がごつごつと当たっていて不本意ながら羽根の雄は形を変えていた。何とか知られまいとして腰を椅子に深く腰掛けても逃れられず。あと一駅我慢すれば降りられるのに一駅前で立ち上がってしまった。
羽根は彼の顔を見上げると意外に若く逆にジロリとこちらを見られてドキリとする。
涼しげな目元にすっきりとした鼻梁、フワリとした長めの髪は一見人気モデルか俳優のようにカッコイイ。こんな人が痴漢だなんてやっぱり混んでいて仕方なく触れちゃっていたのかもしれないな。俺の勘違いで・・・でもすげぇ恥ずかしい・・・この人気づいたかな?
羽根はすれ違いざまにもう一度彼の顔を見ようとすると、フワリと良い匂いが漂って彼が手を伸ばした。
「えっ?!」驚いた羽根は声を上げると彼はニッコリと微笑んだ。
「これ落としましたよ」手にしていたハンカチを拾われて赤くなりながらお礼を言って電車を降りた。
<続く>
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