仕事へ向うはずがまたしても寄り道。
だが、雅秀のせいでそのまま行く訳にも行かない。
だからって海岸に来てどうしようというのだろう。光長はその疑問を迷わずに雅秀にぶつけた。
しかし雅秀はタクシーを降りると光長の肩に抱えながらまっすぐに堤防を通り過ぎた。
目の前に青くきらめく海が広がる。
爽やかな海風を浴びているとさっきまでのムラムラとした感じを少し忘れられた。
このまま何もなければ治まるかもしれない。
光長は大きく深呼吸をした。その唇をいきなり塞がれるまでは・・・
息を吸い込んだ瞬間に雅秀に唇を塞がれて光長は苦しくて雅秀の背中の背広を両手で引っ張った。だが雅秀は容赦なく舌まで入れてきた。
僅かに口の隙間が空けられてそこからかろうじて呼吸をする。
だがおさまりかけていた体は再び熱を帯びて力さえ抜けていく。
雅秀はそんな光長の体を抱きかかえるようにして浜辺に倒れ込んだ。
砂がスーツを汚すのが気になって光長はまだ雅秀に抵抗を繰り返す。
ようやくその唇が離れると光長は肩で大きく息をしていた。
まるでマラソンでもしていたかのように苦しかった。
せめてもの抵抗にと雅秀を上目遣いに睨みつけると雅秀はいつものように口元だけを上げて笑っていた。
「お前が苦しそうだったからここで降ろしてもらったんだ。ちっとは感謝してもいいんじゃねぇの」
「誰がお前なんかに、大体その原因を作ったのだってお前じゃないか!!」
雅秀は光長の話を聞いているのかいないのか、せっせと手に持っていたシートを砂浜に広げていく。
一体どうしてそんなものを持っているのかが不思議だった。
そんな顔で見ていたせいか雅秀はシートをきれいに敷ながら
「これはいつも持ち歩いている。いつ野宿になっても困らないように俺は用意してあるんだよ」
それを聞いて光長は少しおかしくなって思わず笑った。
「本当のことだぞ。お前この仕事甘く見すぎだ」
本来ならこの男とは先輩後輩の仲だ。こういう会話が日常のはずなのに、どうしていつも大幅にズレているんだろう。
光長が突っ立っていると雅秀はシートの上に座って隣に座るように光長の腕を引っ張った。
光長がバランスを崩してシートに倒れ込むと雅秀はその体を抱き止めた。
体勢を入れ替えて雅秀が光長の上に覆い被さる。
雅秀の顔の横に青い空が広がっている。光長はその空を見つめていると雅秀は光長のスラックスのベルトを外し始めた。
だが光長は空を見ている。ぽっかりと浮かぶ白い雲がゆっくりと流れていく。
ずっと商家に監禁されていたからこうして大きな空を見るとすごく気持ちよかった。
同時に雅秀は光長の下着の中に手を入れてきて中途半端だった雄が喜んでいる。
光長は無意識に雅秀の首に両腕を回した。
雅秀は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに光長の雄を手の中に入れて同時に後ろへも指先を伸ばしていく。
「あっ・・はっ・・」
光長は甘い吐息を吐きながらどこまでも青い空を見つめていた。
<「弦月」海辺にて2へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。
PR