瞬く星を眺めていると、雅秀が隣で星を見ながら酒を飲んでいた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
「もうどのくらいになるかな?」
「さあな」
「じゃあ、あとどのくらい一緒にいられるかな?」
「ずっと」
「馬鹿、人間には寿命ってもんがあるんだ。いつか別れるときが来る」
すると雅秀は酒の杯の中を見つめながら
「満点の星を飲み込めば時なんか越えられる。お前も飲め」
そう言って杯を差し出した。
差し出された杯を受け取ると、雅秀は酒を注いだ。
それを覗き込むと杯の中には満点の星が浮かんでいた。
「フッ、らしくないこと言うな」
光長も杯に口を付けると、雅秀は光長の体を濡れ縁に押し倒した。
どちらからともなく唇を重ねていく。
どうも不自然なのはお互いが浪人のような着物と袴を身につけていること。
そして髪が長く光長は後ろの高い位置で束ねていて、雅秀は曲げを結っていること。
まるで永遠を誓い合う恋人のように心がほんのりと温かく感じられた。
ところがその後、急に雅秀が動かなくなった。
「雅秀?」
光長が体を起こしてぐったりとした雅秀を見下ろしている。
「また、ふざけて俺を驚かそうっていう魂胆なら、俺はもう騙されん。早く起きろ」
光長が雅秀の体を揺すっても身動き一つしない。
光長は雅秀の胸に耳をあてた。
鼓動が聞こえない。
「え?!」
瞼を指先でこじ開けると瞳孔が開いていた。
「嘘だ・・・たった今永遠に一緒にいると言ったくせに」
光長の頬を涙が流れ出す。
その涙が雅秀の顔を濡らしても雅秀は目を開けてはくれなかった。
光長はすすり泣くように声をあげて雅秀にすがりついた。
「どうした?泣いているぞ」
肩を揺すられて雅秀の顔を見ると光長はその体にしがみついていた。
「夢でも見たのか?」
やけに優しく話しかけられて余計に雅秀の服をギュッと掴んだ。
(あれはいったい何だったんだ?雅秀が事切れていた)
目の前で心配そうに見つめる瞳は少しだけ細められた。
光長はその顔を見て雅秀から体を離すと目をそらした。
「あ、いや・・ちょっと悲しい夢を見た」
「泣くほどか?」
雅秀にそう言われると余計に心を見透かされたようで顔が赤くなった。
「なるほど」
雅秀はそれだけで何かを悟ったように光長の隣に座って肩を抱いた。
「満天の星を飲めば、時なんか超えられる」
「?!」
光長は驚いて横に座った雅秀の顔を見た。
雅秀は車窓から真っ暗な夜空を眺めている。
「信じられんかもしれないが、俺はお前と前世でつきあっていた」
雅秀の言っている意味がわからずただ雅秀の顔を見つめている。
「お、流れ星だ。見てみろ」
そう言って雅秀は窓を開ける。
心地良い風が頬をかすめた。
こうしていると雅秀の言うことが本当のように思えてくる。
「あ、今流れた」
そう言えば誰かとこうして流星を見た記憶があるような。
いや、きっとデジャブ。そんなはずはない。たまたまそう思っただけだ。
雅秀は許せないほど酷いことをされた男だ。
<「弦月」シティホテルにて1へ続く>
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