羽根は目が覚めてからなぜか朱鳥の車で美波の住む麻布のマンションに向かっていた。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
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雫には朱鳥の車に乗り込むなりすぐに電話した。
「ね、どうしてあんなに何回も電話したの?」
羽根は着信を見た感想を素直に問いただす。
「羽根が心配で仕事が手に付かない。だから・・・」
「だからって・・・」
「だから早く帰ってこい」
「無理・・・だってこれから翼の友達に会いに行くんだから」
「それじゃあ俺もそっちに向かう?」
そう言われると来て欲しい。翼はあんな風に言ったけど結局美波は翼を許していないかもしれない。羽根は直接話は聞きたかったけれど、それはとても恐かった。
「うん・・・雫・・・」
甘えたような声を聞くと雫はいてもてってもいられなくなったらしい。
「すぐ行く!」
けど雫の秘書兼運転手の朱鳥はここにいるのにどうやって来る気なんだ・・・
電話を切った羽根に朱鳥が話かけた。
「何も雫様の運転手は私だけじゃありませんから・・・私よりも腕の良い運転手はたくさんいますよ」
優雅にハンドルを曲げながら朱鳥は微笑んだ。
この人は何もしなければすごく魅力的で格好いいのに・・・羽根は助手席に座ってその端正な横顔をじっと見つめていた。
朱鳥はクスッと笑った。
「ダメですよ。あんまり私を挑発したりしたら・・・また雫様に酷い目にあわされますから」
そうだった朱鳥は雫と・・・
羽根はそこまで考えてブルッと体を震わせた。その頭に朱鳥の片手が乗せられた。
「大丈夫。雫はあなたのことを大好きですから」
慰めとも取れる言葉だが雫のことを好きな朱鳥が言うとやけに説得力がある。
羽根が苦笑すると朱鳥の手はすぐに離れていった。
「またこんなところを雫に見つかるとうるさいですからね」
相当懲りたらしく朱鳥は羽根を腫れ物に触れるように大切にしてくれた。
「そろそろこの辺じゃないですか?あの大きな屋敷でしょうか?」
朱鳥の言葉に羽根が顔を上げると目の前に大きな和風の門構えが見えた。どうやら簡単に入れそうにない。
一度車を止めると羽根は降りた。
玄関の横にあるインターフォンを鳴らすと透明で澄んだ美波の声がした。
良かった・・・
「あの僕は美津濃羽根と言います。美津濃翼の弟です」
「ああ、着いたんだね」
インターフォンの向こうから落ち着いた透明な声が聞こえてきた。
<「恋占い」美波の家にて2へ続く>
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