迷路のようなこの館の廊下はひとりで歩くには難しすぎる。その案内には花梨が姿を見せた。
桔梗は一度自分の部屋に戻ってから姿を見ていない。
夕食の時も花梨が案内していた。もしかしたらもうバレてしまったのだろうか?光長は少し不安に思いながら長い廊下を歩いていく。
「桔梗は?」わざと花梨に尋ねてみると「さぁ?」相変わらず無愛想な回答が戻ってきただけだった。ようやく芳生の部屋の前に来ると花梨はそのまま消えていった。
ノックをすると「どうぞ」という芳生の声が中から聞こえてドアを開いた。
入口に置かれていた衝立から中を除いて光長はギョッとした。
正面の机に芳生はこっちをむいて座っていたが手前のソファの上に裸にされて亀甲縛りにされた桔梗がこっちを向いて座らされていた。口にもボールのようなものを咥えさせられて塞がれていた。すっかり起ち上がっている雄の穴に針のような細い長いものが差し入れられている。桔梗の顔はのぼせたように赤く瞳も涙混じりで真っ赤になっていた。
光長は思わず数歩後ろに下がった。
「この子は手癖が悪くて、すぐに客のものに手を出すんです」
芳生がチラッと桔梗を見ると桔梗の雄の穴に差し入れられている針の先が濡れた。
やっぱりここは尋常な場所ではないのだと、光長は感じていた。
「まあ、そこにかけてください」芳生は桔梗の正面の席を勧めると、自分は桔梗の横に座った。
光長はしばらく立っていたが、仕方なく座った。
「あなたに朗報があります。もしもしばらくここにまたいてくださればあなたにも不老不死の薬が手に入ります」
芳生は雅秀のことも光長のことも知っているのだろうか?光長は半信半疑に尋ねてみた。
「何のことですか?」
芳生は桔梗の雄の先の針をちょっと指先で押す。桔梗が瞳を見開いてそこから涙を流した。
光長は慌てて腰を浮かせる。
「大丈夫、痛くはないんですよ。彼は気持ちよすぎて泣いているんです」
そう言われてみると顔が痛そうではない。だがどこまでが本当かはわからない。
「不老不死の薬欲しいでしょう」
そんなことを言われて首を横に振ると
「じゃあ森本君と一緒じゃなくてもいいんですか?」
と微笑んだ。芳生の横で桔梗の雄がヒクヒクと動いている。芳生はもう一度針に触れる。
桔梗は腰を揺らしている。
光長はその光景を見つめていた。この人はどこまで知っているんだろう?
「実は私も八百比丘尼なんですよ。人魚の血の犠牲者・・・」
何となくこの人だったら妖怪だと言われても納得できる。冷酷な行動のどれもが人間離れしている。
そのまま光長は黙って芳生の冷たい人形のように整った顔を見つめていると、彼のガラス玉のような瞳が光長を見つめた。
「これ、気になりますか?」
と桔梗の頬に触れる。そのまま桔梗の唇にわざとねっとりとした口づけをしてから光長を振り返った。桔梗は頬を赤らめながらどこか満足そうな顔をしていた。
光長はそれだけで自分の体が熱くなっていくのを感じた。
「私はこれでもこの子を可愛がってあげているんですよ。彼は私にいたぶられるのが好きでねぇ。わざといたずらをしてはこんな風になることを望んでいるんですよ。でも私もこのこといられる時間は限られているんです」
芳生は桔梗の背中に片方の手を回した。
「これでもあなたや森本君の気持ちはわかっているつもりなんですよ」
光長はまだ言葉が見つからずに呆然と2人を見つめていた。
<「弦月」再び商家にて5へ続く>
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