腕を動かすと優翔はハッとして月深の両腕を拘束していた紐を解いた。
ようやく自由になった腕をさすっていると
「ごめん・・痛かった?」
と優翔が手首に唇を押し当てた。
すっかり赤くなってヒリヒリする手首にふわりとした優翔の唇が気持ちいい。
ようやく月深は全てから解放されてぐったりとベッドに倒れ込んだ。
何度か達したおかげで体がだるい。
これでようやく眠れそうな気がした。
その瞼にも優翔の唇が落ちてくる。
「おやすみ」
囁くような声に目を閉じたままそっと微笑むと今度は唇が塞がれた。
ああ・・なんだかすごく気持ちいい
これは優翔の熱が伝わって心地良いからかな
肩に回された腕が引き寄せられて優翔の胸の鼓動まで響いてくる。
俺の胸の音も優翔に伝わってるのだろうか?
あ、いや・・・今更だな
優翔の腕の中で月深はいつの間にか寝息を立て始めた。
「どんな夢見てやがる」
優翔は腕の中で疲れて眠る月深の額に唇を押し当てた。
「ったく・・どうすんだよ・・」
と大きなベッドの上でそのまま目を閉じた。
目を閉じるとこれまで起きたことが走馬燈の様に瞼に浮かんだ。
そうだった俺にはもう全てがなくなったんだ・・・
だがここにいる月深に救われた
何もなくしてしまった俺に何も言わずに大金を貸してくれようとしている。
そんな月深に甘えてしまっても良いのだろうか?
確かに金を貸して欲しいと言ったけど
本当にそんな大金を出すとは思わなかった。
「なぁ月深ありがとうな。でも俺その金を手にしたらきっと駄目になりそうな気がする」
優翔はぎゅっと月深の体を抱きしめてもう一度その唇にキスをすると体を起こした。
「さて、かなり心残りはあるんたけど、今度会うときにはきっとお前の体は俺を受け入れてくれるのかな」
優翔はゆっくりと起き上がる。
ベッドから降りるとクローゼットへ行き、服をあさる。
「お前の方がちょっと細いけど、まぁ、着られなくもないだろう」
と服を出すと袖を通した。
「うん、なかなか良い趣味じゃねぇか」
優翔は鏡の前でくるりりと回りながら月深の服を着た自分の姿を写した。
やがてすやすやと眠る月深に微笑むと
「悪い、いつまでもこんなところに居るわけにはいかぇんだ。またな月深」
と片手をあげると予め知っていた場所から車のキーを持って出ていった。
<「更待月」月の石21へ続く>
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