ナジムは自分の部屋に戻っていた。
あの後駆けつけたカマールが手際よく手配を済ませて、ナジムに危険が及ばないように宮殿に送ってくれた。
カマールは何度もナジムの頭を撫でている。
アサドは別の車で病院へ運ばれたらしい。
ナジムはぶるぶると震えたまま泣き続けていた。
「知らない・・何も見ていなかった」
ナジムは本当に何も知らない。
車に他に乗っていた運転手は車の前に大きな木が倒れていたのだと言った。
アサドはそれを別の車の人と一緒に退かそうとしたところを打たれたらしい。
計画的だったとカマールは考えているようでナジムがその相手の顔に見覚えがなかったかを尋ねていた。
「これじゃあ犯人の目星がつけられねぇな。アサドがいなくなった今、お前は最も危険になったわけだな」
アサドがいなくなったという言葉に驚いてナジムは顔を上げた。
「アサドは?アサドはどうなの?」
カマールは目を伏せて首を左右に振った。
そんなこと言わないで・・・
ナジムの瞳からは涙が溢れ続けていた。
そんなの信じない。
どうして・・・
「お前の気持ちが落ち着くまで俺が側にいるから」
言葉は乱暴でもその口調はとても物静かだった。
ただただナジムの髪を撫でてくれる。
こうして目を閉じているとまるでアサドに撫でられているような気がする。
だが、アサドがこうして撫でてくれることはもうない。
あんなにも自分のことを嫌っていたアサド。
一度だけでも本物のマラークと逢わせてあげられれば良かった。
いや、ナジムがマラークのふりをしてあげれば良かった。
だけど・・・
涙がとめどなく流れ続けて、一体どれほど泣けばこの涙は止まるのかと思うほど泣いた。
カマールは黙って何度もその頬を大きな手のひらで拭ってくれた。
「お前はあんなろくでもない男のためになぜこんなに泣く?」
そう言われて、ナジムは自分がアサドを体だけではなく心から好きだったのだと気がついた。
「わたしは・・・アサドが・・・好きで・・」
泣きながらとぎれとぎれに呟くとカマールが頬に手を添えた。
「いい加減泣きやめ」
ナジムの唇にキスをした。
ナジムは突然塞がれた唇を払おうと手を挙げる。
その手はカマールに掴まれてそのままソファーに押し倒してきた。
いやだ・・こんなのやだ・・
ナジムはカマールから逃れようと悶える。
「俺があんなろくでもない野郎のことなんか忘れさせてやるから」
とナジムの服を開いた。
まだアサドにつけられた痣が体中に残されていた。
その上から唇をあてて強く吸い付いてくる。
「ん・・いやぁぁ・・・やめっ・・」
ナジムが暴れるとカマールは臀部を鷲づかみにした。
「あっ・・・」
「お前は素直で良い子だな。こうして触れただけでここがヒクヒク反応しやがる」
カマールがナジムのズボンを下着ごと下ろした。
「こんなことをして!王に言いつけてやる!!」
ナジムが強気でカマールを睨みつける。
いつの間にか涙が止まっていた。
「これは随分と気の強い王子様だ」
カマールはニヤリと笑った。
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