この国で生まれて、一度もその世界から出たことがないマラークにとってそれは憧れであり
また、ここから出ることが夢でもあった。
「王子、またその様な場所で外を眺めておられて、もうすぐ日が傾きます。そろそろ夜の宴のお支度をお願いいたします」
マラークの教育係謙身の回りの世話係のアサドは、部屋の入口から声をかけた。
「そんなところにいないでもっとこっちに来て、また色々な話を聞かせてよ」
アサドはまだ年齢は20代中盤といったところだが、今年17歳になったばかりのマラークにとっては色々なことを知っていて話をするのが楽しかった。
「いけません。早くお支度を済ませなければ私が王に叱られます」
アサドはまるでマネキン人形のように整った端正な顔立ちに苦笑いを浮かべた。
「宴などどうせ兄や父上を喜ばせるために国内のものが歌や踊りを披露するだけで面白くない。そんなことよりアサドの話の方が何百倍も楽しいよ」
プウッと頬を膨らませたマラークは可愛らしい青い瞳でアサドを見つめた。
マラークは王が4番目の妾に生ませた子供で異国の血が混じった母の肌の白さと青い瞳を受け継いで美しい顔立ちをしていた。
そのために王はこの子をマラーク(天使)と名付けて、他の兄弟よりも可愛がっていた。
アサドを教育係にしたのもいずれ兄たちよりもマラークをこの国の王にするため
優秀な教育係が必要だったため、わざわざ外国から招いたのだった。
しかし、マラークはなかなか頭の良い子だったせいか、アサドはいつもマラークには甘かった。
「でも、マラーク様本日は外国から商人がおもしろいものを外国から持って来ていると聞いていますよ」
その一言でマラークの顔はパッと明るく花がほころぶような笑顔を浮かべる。
アサドはそんなマラークの顔から視線を逸らした。
「本当?!じゃあすぐに着替えるよ」
アサドの首に抱きついたマラークにアサドは
「全く一国の王子ともあろうお方が、一介の使用人になど簡単に抱きついてはいけないと何度お教えすればおわかりになっていただけるんですか?」
と軽いため息をついた。
マラークの体が離れていくと、アサドはマラークの着がえを持って部屋の前で待機させていた従者を呼んだ。
従者がそれをアサドの目の前に置いて下がっていくと、マラークの服を脱がしはじめた。
この国では王家の肌はなるべく人に見せてはいけない習わしがあった。
ただ、アサドはマラークの世話係としてそれを許された数少ない従者だった。
腰紐を解いてスルリと落とされたパンツから現れた白く長い足にはまだすね毛も生えていない。
シャツを肩から落とすと格闘技で少しだけ鍛えられた胸筋がすこしだけ逞しくなっていた。
「見て見てアサド、大夫筋肉ついたでしょ」
白い肌を惜しげもなくアサドに見せながら笑う顔が、本当に天使が舞い降りてきたようだとアサドは思った。
あまりの眩しさに左手をかざしそうになるのをこらえながら、着がえの服を取ってマラークの背中にかけた。
「いけません。私など身分の卑しい者に簡単にその御身を晒すなど、もっとご自重ください」
せっかく見てもらおうと胸をはったのにとマラークはがっかりして吸い込んだ息を吐き出した。
アサドは手早くマラークの白い肌に触れることもなく、煌びやかな衣装を身につけさせていった。
読了、お疲れさまでした。
やっと次作を書き始めました。
今度はちょっとアラブものです。シンドバッドとか千夜一夜物語といったイメージを浮かべていただけると
まぁ、そんな感じです。
だけど世界は全て架空のものです。
オフにするかここで連載するか悩んでいますが、とりあえずしばらくここで書いてみます。
先日J庭に行ってきました。
お話ししてくださった方、ありがとうございました。とても楽しく勉強になりました!!
そちらで色々と刺激を受けてオリジナルが書きたくなったのですが・・・
まぁ、気まぐれ更新になると思いますがよろしくお願いします!