羽根は驚いた。羽根が知る限りこの兄はずっと蒼空と付き合ってきている。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[0回]
それなのに本当は美波のことを愛していると言うことは蒼空は愛されてはいないのだろうか?羽根は不思議そうな顔で兄を見た。
「酷い男だよな。いいんだお前に嫌われるの覚悟で話すよ。俺は美波に振られたんだ。もう学生の時で蒼空とつきあい始める前の話だけど・・・」
翼は苦笑した。
羽根は両手で透明なミネラルウォーターのボトルをテーブルの上に置いた。
「一目惚れだった。美波の色白の肌、ちょっときつそうな唇、潤んだ瞳、漆黒のストレートの髪・・・どれをとってもこの手の中に抱きたくて、俺は2年になった学園祭の後夜祭の後、無理矢理美波を抱いた・・・」
羽根は呆然と兄を見つめる。
「美波は嫌がって苦しそうに何度も俺に許して欲しいと懇願した。けど俺は美波に夢中で抱いてしまえば何とかなるとそう思って嫌がる美波さえ美しく、その姿に余計そそられて抱いたんだ」
羽根の言葉に翼は傷ついたように俯いた。
「ああ、酷い男だな。それから美波は俺の前で笑わなくなった。俺はそんな美波の態度が面白くなくて強引に行為を強要して続けさせた。美波の耳元で酷い言葉を浴びせながら、美波が反応するのを俺への愛情だと思いこんで・・・」
「そんな・・ひどい・・」
翼は顔を上げて羽根を見た。
「ひどい?か・・けど必死だった。お前だって最初は強引にされたんじゃないのか?男同士なんてきっかけはそんなもんじゃねぇと成り立たないと思ったことねぇか?」
月明かりに照らされた翼の顔が少しだけ怖く見えた。
「そんな言い方兄さんらしくない」
羽根の顎をとらえてその顔を覗き込んだ翼は少し目を細めた。
「お前にこんな事を言うつもりなんかなかったけどお前は自分が聞いたことだ。俺が男に興味を持ったのはお前のせいだ。お前が普通じゃねぇから・・・そんな中美波はお前と同じ匂いがしたんだ。学校の奴らも数人美波に目を付けていた。だからその前に何とか使用と必死だったんだ。お前よりも唯一俺が愛したのは美波だ」
と翼は強引に羽根の唇を塞ぐと強引な噛みつくようなキスをする。
口の中が痛くなるような舌の動きに羽根は両手で翼を突き飛ばした。
「じゃあ、どうして蒼空さんと付き合っているの?!酷いことだよね!!!」
羽根の声が思わず大きくなってベッドで眠っている蒼空の方を見てから口を押さえた。
「別に今更声を抑えることもないよ。あいつは全部知っていてそれでも俺を選んだんだ。俺がいつ美波を抱こうがあいつはそれでも良いと言った」
「そんなの・・・」
嘘に決まっている。好きな相手が別の人を好きなのに耐えられるはずはない。
「今は美波さんってどうなの?」
だが先日会った感じだと美波も翼に対する嫌悪は感じられなかった。
「あいつの体が俺を欲しがるようになった。だから口では嫌がっても俺に抱かれることを拒みはしない。むしろ喜んでいるんだよ」
確かに美波色っぽさは恋人がいるようにさえ思えると羽根は思った。
だからってこんなひどい事が許されるのだろうか?
「じゃあ美波さんも一緒なんだね」
「いいや・・・あいつは来てはくれない」
「えっ?!」
兄の悲しそうな声に酷い兄でもその心が読めた羽根はそれ以上は何も言えなかった。
「俺が美波さんに会いに行ってもいい?」
羽根の言葉に翼は驚いて突き飛ばされて床にいた翼がもう一度立ち上がった。
「今なんて?」
「兄さん不器用だから俺が会いに行ってくる。蒼空さんには悪いと思うけど、蒼空さんだってこのままじゃ可愛そうだよ」
翼が手を伸ばそうとするとその手を横から来た蒼空が掴んで引き寄せた。
「良い弟だな。俺お前の弟をやっぱり無理矢理手に入れれば良かった」
どうやら起きてずっと話を聞いていたらしい。
「そんなことさせっかよ」
蒼空の言葉に翼が苦笑する。抱き合う二人を見てから羽根はソファーに転がった。
「とりあえず少し寝せてね。おやすみ」
とすぐに寝息を立てた。
それを蒼空と翼は微笑んで見つめていた。
<「恋占い」美波の家にて>
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