雅秀の家は学校から電車で20分くらいの場所にあった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
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行く途中で雅秀が今日は誰もいないし、明日は休みだから泊まっていけと言われ、光長は両親に連絡を入れた。コンビニで食べ物や飲み物も仕入れると何だかワクワクした。
「ここだ」雅秀がそう言って立ち止まったのは格式のありそうな大きな日本家屋の前だった。
立派な門構えからして大邸宅らしい。使用人の1人や2人いても全然おかしくない。
だが誰も出てこなかった。
「すげぇ、お前ってお坊ちゃまだったのかよ」
赤く染まった夕日の中で光長は改めて雅秀の顔を見ると雅秀は今まであまり見たことのないような顔で笑った。
「おじゃましま~す!」
光長が挨拶しても中から何の返事もなかった。やはり他には誰もいないらしい。
「なあ、お前ってこんなところに両親と3人で住んでるの?」光長は不思議に思っていたことをそのまま口にすると、雅秀は首を横に振った。
「まさか、本当は料理人とか執事とか家政婦さんとかいるんだけどね。今日は全員休んでもらったんだ」
そう言う雅秀の瞳がキラリと光った。
あれ?何だかいつもと雰囲気が違う・・・雅秀一体どうしたんだろう?
「そうか、やっぱり・・・」
「それより早くあがれよ」「うん」
光長の手を引いて雅秀は家の中へ招き入れた。
玄関の引き戸を開くと目の前には大きな木造の階段があり、時代劇のセットか、タイムスリップでもしたのではないかと思えるほど古風な造りだった。
「なんかすごい・・・映画のセットみたいだ」
「ふん、そうか?」雅秀は感動している光長の手を引いてその階段を昇っていく。
2階に上がると長い廊下があり、障子や襖で部屋が仕切られていた。
光長はふとどこかで見たことがあるような気がした。雅秀に連れて行かれた奥の部屋に入って更にその思いは強くなった。
屋敷の広さとはあまり関係なくこじんまりとした朱に塗られた壁の部屋には、趣のある家具が置かれていてまるで人形の家のようなイメージを受けた。
だが、光長が何度も夢に見ている場所だった。夢の中ではここでいつも淫らな行為を強いられていた。それが目の前に現れて光長は呆然と部屋を見回している。
夢の中でのとぎれとぎれの光景が今、始めて線となって繋がった。
床の間の一輪挿し、殿様のような肘掛け、大きな姿見鏡、赤い布団に並べられた2つの枕・・・
まるで江戸時代の遊郭のようだ。
部屋の中を眺めている光長の肩をポンと雅秀に叩かれてついビクンと体を揺らした。
「どうした?」
急に無口になった光長に雅秀は「適当に座って」と自分も畳の上に座る。
どうしてこの部屋なのか光長は少し不安を感じた。
奥の部屋にある赤い布団を気にしながら座る。
すると雅秀が光長の手を引っ張った。
「何でそんな遠くに座るんだよ、もっとこっちに来いって。せっかく誰もいないのに」
誰もいないことと近くにいることの関係がよくわからない。恋人どうしてもあるまいに・・・
だが、雅秀は光長を引き寄せると自分の腕の中に納めた。
「やっと手に入れた。全く手こずらせやがって・・・お前って新鮮なのはいいんだけど、少しは待っているこっちの身にもなれってーの」
光長の顎をとらえて唇を寄せる。次の瞬間には光長の唇は雅秀に塞がれていた。
初めてのキスなのに雅秀は容赦なく舌を入れてきた。
雅秀の舌が生き物のように光長の口の中を動き回る。光長は怖くなって雅秀を力一杯突き飛ばした。
「・・・やっ・・・・やめてっ!」
<「弦月」弦月3へ続く>
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