ナジムの生い立ちについても調べる必要がありそうだった。
どうやらナジムがここに来たのは全くの偶然では無さそうだとアサドは感じていた。
もしかしたらナジムはマラークと血が繋がっているのかもしれない。
そうじゃなければあんなに似ているはずがない。
あの肌の色と瞳の色からはおそらくマラークの母方との血縁関係かもしれない。
だが確かめたくてもマラークの母はもうこの世にはいなかった。
とにかく今はナジムがマラークの身代わりだと誰かに気づかれないようにするしかない。
それにしてもナジムは少し厄介だ。
血を見る度にあんな風に怯えられたらすぐにバレてしまう。
とりあえずなるべく目を離さないようにするしかない。
アサドはナジムの部屋を離れている間は外から鍵をかけるようにしていた。
ナジムはあれからずっとベッドの上で過ごしていた。
前日の疲れもありぐったりとベッドに横たわっていると、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
少し小腹が空いてきたと思っていると、部屋の扉が開かれてアサドが入ってきた。
彼の手には温かいスープの器が用意されていた。
「そろそろお腹が空いた頃かと思いまして用意させました」
アサドはテーブルセットの上にその器を置いた。
ナジムはそのいい香りに誘われて、フラフラとベッドから立ち上がった。
するとアサドに来ていた服を引っ張られた。
「何という格好をされているのですか?マラーク様はお部屋にいらっしゃる間も、沐浴と着替え以外は滅多に肌はお見せになりませんでした」
ナジムは服を引っ張られて床に跪いた。
「ごめんなさい・・・」
長い寝間着のボタンを半分くらい開いていたため、アサドに引っ張られて肩から胸まで露わになってしまった。
アサドはナジムに近づくともう片方の服も引っ張って肩から胸を露わにする。
「あっ・・・」
ナジムは上半身の服を下ろされて小さく声を上げた。
「最も、あなたは人に見られるのがお好きだから、私と2人の時は特別に裸でいることを許しましょう。どうします?下も脱ぎたいですか?」
アサドの冷たい視線はまだ健在だった。
ほんの少し前に優しいと思っていたことを訂正する。
やはり、冷血な男だ。
ナジムはふるふると首を横に振って小さく
「許して・・ちゃんと着ます」
と言うが、アサドの口元は意地悪く持ち上げられていた。
「だから私だけの前では裸でいいと言ったでしょう」
ナジムはおとなしく席に着いた。
上半身だけ裸という不自然な格好でスープを飲む。
だがスプーンを持つ手に力が入らず、思わずスプーンを皿に落として大きな音を立ててしまった。
「いけませんね。手が震えて飲めないのでしたら、そうおっしゃっていただければ私が飲ませて差し上げます。さぁ」
アサドはナジムの隣に座ると、皿に墜ちていたスプーンを手にした。
スープをすくうとナジムの唇に運ぶ。
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