光長は両手首の拘束が外されていないことに、まだ終わっていないことを悟っていた。
雅秀の吐き出した蜜が光長のきれいな服を汚してしまった。
せっかく飾られても脱がされたり汚されたりしたら何にもならないと光長は思っていた。
だが、雅秀はその光景に余計に興奮していたらしい。汚れた服にストッキングを引き裂いてその光景を鏡に映し出しては光長の体に触れた。
光長自身もその卑猥な格好に興奮を隠せない。2人ともおかしくなってしまったのではないかと思うほど鏡の中で楽しんでいた。
そこはまるで異世界の空間のように静かで邪魔も入らない。
信じられないほど光長は雅秀に従順になっていた。雅秀の指先もいつになく優しく感じられる。こんな仕打ちを受けていながらそんなことを思うこと自体もう狂っている。
思えば雅秀と出会ってから、知らなかった快楽に突き落とされてきた。
普通では考えられないようなおかしな行為ばかりが日常になっていった。
でも、体以外にも雅秀は光長を特別に扱ってくれた。今の行為は別としてこの場所さえ信じ難い。いや、この行為さえ光長を喜ばせるためにしているのかもしれない。
光長はそれに気づいてしまった。ずっと雅秀の身勝手だと思って拒絶してきた。
だが、雅秀は生まれ変わる前からの光長のことを知っていたと話してくれた。光長自身よりも光長に詳しいのならまだ自分で気づいていないことも彼はお見通しだったわけだ。
今こうしていても雅秀が触れる場所はツボを得ている。光長が感じるところばかりを的確に攻めてくる。光長は急に嬉しくなって拘束されている両手を雅秀の顔の前に持ち上げた。
「解けってか?」気づいて尋ねてくる雅秀に頷くと雅秀はスッと紐の端を引いて解いてくれた。
解かれた両手を雅秀の首に回す。そのまま顔を近づけて口づけをねだると雅秀は少しだけ驚いた顔をしたが、すぐにその唇が与えられる。
軽く柔らかな唇が触れるとすぐに湿った舌が光長の唇に触れてノックする。僅かに開いた隙間からスルリと入り込んだ雅秀の舌は光長の舌に絡みつく。きつく吸われて光長も雅秀の舌を求めた。お互いの体が解け合うように一つになっていく気がした。
深い水の中へそのまま沈んでいくような錯覚さえ感じた。不安になって薄く瞼を開くと雅秀の揺るぎない瞳が愛おしそうに光長を見つめている。それだけで雅秀が過ごしてきた長い時間が理解できた。言葉よりもこうしていることの方が説得力がある。
もうしばらくこのままいられたらと光長は願っていた。
<「弦月」湖畔にて11へ続く>
にほんブログ村
読了、お疲れさまでした。
web拍手をありがとうございます。
J庭ですが友人の青空隊士さんのスペースにて売子してます。(多分)
もし、いらしたらついでにお声かけていただけると嬉しいです。・・・何もでませんけど・・・
PR