手首を戒められていた自分のシャツはもうクシャクシャになっていてしまった。
※ここからは18歳以上の方のみどうぞ
[2回]
だか裸でいるわけにもいかずそれに袖を通そうとすると雅秀が着物たとう紙にくるまれたものを差し出した。
「これを着ろ」
それを受け取るとたとう紙を開いた。
そこには普通の男物の着物が入っていた。
「これは?」
光長はすっかり腫れて赤くなった瞼で雅秀を見上げた。
「着物は着られるか?」
静かな声でそう言われて光長は首を左右に振った。
「仕方ねぇな。立て」
光長がゆっくりと立ち上がると雅秀はバサリと背中に少し重みのある着物をかけられてそれに袖を通した。
こうしているとなぜかとても懐かしい感じがする。
だが、雅秀とはこの会社に入るまでは知らなかったはずなのに。
雅秀は光長の着物の前を持って裾たけを調節すると器用に紐を締めた。
絞めながらふっと雅秀のコロンの香りが漂う。
今までさんざん虐められていた時には何も感じなかったのに、こうして着物を着せてもらっているとなぜか気になる。
「ボーッと見てねぇで、押さえるとか帯持ってるとか手伝え」
雅秀を見つめていることに気づかれて光長は俯いた。
その顔を下から覗き込まれた。
「お前、このくらい着られるように練習しておけ」
雅秀の言葉の意図がわからず戸惑っていると雅秀は帯を締めながら耳元で
「ここにいる間は着物の生活だ。俺もそれで着物の着方を覚えさせられた。必要になるときが来るはずだからきちんと習え」
と思っていたよりもまともな回答をされた。
「さっき言ってた映像とかって・・・」
雅秀が落ち着いた感じに戻ったので光長は恐る恐る尋ねてみた。
しかし、雅秀はニヤリと笑って
「今にわかるさ。今は知らない方が幸せだと思うぜ」
と言われたがそれでは余計に気になる。
だが、無理に問い詰めてまた酷い目にあわされるのも嫌だ。
光長はおとなしく着物を着終わるとソファーに座った。
だが、目の前に座った雅秀は何か堪えるような表情をしている。
そこにドアを叩くノックの音がした。
<「弦月」茶室にて1へ続く>
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頑張ります。タイトル間違うとか本とスミマセン。。。
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